2011年4月29日金曜日

介護施設と認知症

先日、特養ホーム芦屋喜楽苑、市川理事長の講演を聞きましたので、そのまとめです。

近年、特養ホームへの入居が難しくなっているので、入所者の介護度は平均4となっており、その80%は何らかの認知症である。
認知症の60%はアルツハイマー、30%は器質欠陥だ。
家庭で介護しているケースで多いのが、仮性認知症と言われる「うつ病や譫妄症」である。
初発初期の間にちゃんと手当すれば、回復することもある。
私の父の場合は、居宅介護をうけていた段階では、認知症と診断され、一時は車椅子生活、ほとんど言葉を発しない状況が続いていた。
母による老々介護に限界が来て、老人保健施設にお世話になったところ、日々規則正しい生活とヘルパーさんのリハビリにより、かなりの回復に驚いた経験がある。 後ほど聞いてみると、やはり仮性認知症で譫妄症だったようだ。

認知症になっても感性・感情は最後まで失われない、どうやら本能的に自分を守るためらしい。 認知症では、①自分の状況が納得できないので、常に不安な気持ちである。 これは小集団に所属していることで安心感を得られるケースが多い。
②環境によって、出方が変わる。性格に合わせたいいケアーをすると改善する。 ③まだら痴呆は現実とプライドとのせめぎ合いの結果、気難しい感じになる。個別対応が必須で論理的な対応が効く。

介護を提供する側としての基本的な考え方は、
①人間は社会的動物なので、ケアーは社会と切り離しては難しい。 そのため
地域の中で一人の生活者として、どのように日々の暮らしを築くのかが最も重視していること。
②具体的には、人間の尊厳を守るーー高齢者への言葉遣い(立派な大人として、自己決定が出来るような話し方)
プライバシーの保持ーー同性介助(オムツ、風呂など)
市民的自由、社会参加の尊重ーーお酒、外出、外泊などの自由、個人の電話
③社会性を保持するため、家族会やボランティアーの参画を推進している。
介護施設を地域文化の中心にしたいので、ギャラリー、喫茶店を併設、外からのお客で大変繁盛している。
さらに、積極的にボランティアーを受け入れ、現在300人程度が集う。
主に、生活を豊かにする部分、買い物や居酒屋に一緒に行くなどをサポート。
④ハードで人権を守る活動、全室個室を目指す。個室だと家族の訪問時滞在時間が4床室の2倍以上となる。 食事もできるだけプライベートゾーンで摂ってもらう。睡眠時間も個室だと7時間、4床室では5-6時間くらいと差が出ている。
⑤生命力を萎ませない施設づくりが理想。 5つの生活落差を無くしたい。
空間落差、時間落差、規則落差、言語落差、役割喪失落差 
残存能力を維持し、活かす介助が大切。

例として、
故郷への里帰りサポート:故郷再訪の希望者に介護者が付き添って実現させ、失語症だった人が発言するようになった。
介護人もその人の数十年の過去を知ることが出来て、以降介護の仕方が変わった。

別のケースでは、故郷に戻って、3000人も取り上げた助産婦さんだったと分かり、施設に戻ってからも、その話をすると笑顔で会話が弾むようになった。

また、ずっと長い間水平社運動をしていた事が故郷の知人や、友人から知らされ多くの人から尊敬を集めていたエピソードなども、思い出された例もある。

私も、両親の介護を終え、これからは自分が介護、介助を受ける立場になりつつあるのを、日々実感している。
将来の自分はどうなるのか予見できないが、衰えてゆくことは間違いない。
残された人生は長くは無いが、それだけに一日一日が貴重に思えてくる。
オーストラリアのクリスティーン・ブライデンさんは46歳で認知症と診断されたが、科学者であった彼女は残存する能力を使って、毎日の自分を観察し、認知症の研究、対応などを纏めた。それが「死ぬ時 私は誰になってゆくのか ?」と言う本だ。 
クリスティーンのメッセージを聞くことができます、こちらからどうぞ。

衰えは誰にでもやってくるが、全部が一度にだめになる訳でもない、残された機能、能力をとことん使い切るのが、人生の使命ではないだろうか。
人生の使命を生きるとき、マイノートが必ず役立つはずだ。

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