2008年10月5日日曜日

「緩和ケア」は最後の治療ではありません

緩和ケアに関する解説記事が下記のインターネットマガジンに載っていましたので転載します。


「緩和ケア」にまつわる誤解

がんの治療において、「緩和ケア」の重要性が指摘されるようになってきました。以前は、ほとんど知られていなかった言葉ですが、最近は、がんに関する言葉として少しずつ認知度が上がってきています。

しかしながら、この「緩和ケア」の内容については、色々と誤解も多いようです。

今回は、がんの治療には欠かせない「緩和ケア」について、お話したいと思います。

誤解その1 緩和ケアは最後の治療である

緩 和ケアの緩和とは、緩め和ませること。がんという病気は、その性質上、痛みが強くでたり、著しい全身倦怠感が見られたり、といった体にとっての不快な症状 がでてきます。また、頑固な便秘や下痢といった便通異常や、胸水の貯留による呼吸困難など、生活の質を落としてしまう症状が見られることも少なくありませ ん。

緩和ケアというのは、まさしくそういった症状を緩め、患者さんの体も心も和ませるために行われるものです。

今まで、こういった緩和ケアというのは、もうなすべき治療がない方に対して、最後に行われる治療だ、という考え方が根強くありました。患者さんはもちろんのこと、医師にとっても同様だったと言っても過言ではありません。

しかし、今は違います。体の痛みやつらさ、原疾患や合併症に伴う様々な症状については、がんに対する治療がどのような段階であっても、速やかに行うべきものだというように、認識が大きく変わりました。

患者さん治療の進め方と、患者さんを苦しめている症状を取るために緩和ケアを行うと言うことは、別のベクトルで考えようというのが今の基本的な考え方と言えるでしょう。

誤解その2 麻薬は最後の薬である

がんは、その症状の進行とともに、痛みを伴う場合が出てきます。先ほども述べたように、がんに伴う痛みは、頑固で激しいことが多いです。

このような「がん性疼痛」に対しては、WHOが痛みのコントロールのためのガイドラインを発表しています。

それによると、がんの痛みについては、まずは、通常の鎮痛剤を投与しますが、十分な鎮痛効果が得られない場合には、麻薬の使用について、躊躇するべきではないことが明記されています。

また、痛みが出てからお薬を使うのではなく、お薬を定期的に使うことで、がんの痛みを感じないようにするというのが、今の疼痛管理の目標です。

がんができる場所によっては、比較的初期の段階から頑固な痛みが出ることがありますが、そういったときには、躊躇せずに麻薬を使うことがガイドラインでも明記されています。

さらに、麻薬には、分量によっては多幸感をもたらすことがありますので、つらい心を休めてくれる作用も期待できます。

がんの治療において、決して、麻薬は最後の最後に用いる薬ではないことを、是非、覚えておいていただければと思います。


積極的な「緩和ケア」を受けるために

がんに伴う痛みや不快な症状を軽減させたり取り除いたりするための「緩和ケア」。しっかりした「緩和ケア」を積極的に受けて、がんの治療に前向きな気持ちで取り組むと言うことは、非常に大切なことだと思います。

では、その「緩和ケア」を積極的に受けるためにはどうすればよいのでしょうか。

それは、患者さんご自身が、つらいことや痛いこと、苦しいことを、がまんせずにきちんと主治医に伝えることから始まります。

痛みや苦しみ、つらさといったものは、血液検査やレントゲン写真などで、測定することができません。もちろん、異常値や異常所見の出方によって有る程度の推測はできますが、最終的には、患者さんご自身の感じ方によるところが大きいのです。

よって、まずは、患者さんから、今の自分は、こういうことがつらいとか、ここがこんな時に痛いなどといったことを、主治医の先生に伝えていただくことが必要です。

「緩和ケア」は、決して最後の治療ではありませんし、麻薬も最後のお薬ではありません。是非、安心して、医師にご相談になってみるとともに、もし、麻薬が処方された場合には、非常に良く効くお薬だととらえて服用していただくことをおすすめします。

【関連リンク】
WHOのガイドラインについての説明はこちら⇒がんの痛みは我慢しなくて良いのです(All About がん・がん予防)

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